VIET-NAM - Nouvelle musique traditional (1973)
( Vietnam, Oriental Music, Improvisation )

1. Improvisation dans le style du Chau van et du
2. Improvisation rythmique au trong nhac le
3. Improvisation dans le mode Quang
4. Improvisation dans le mode triste
5. Improvisation dans la nuance modale Xuan
6. Improvisation dans le mode Sa-mac
VIET-NAM - Nouvelle musique traditional (1973)

   フランスの国営放送局、ラジオ・フランス(Radio France)の後援により運営されている会社で民族音楽作品の発表を中心に行っているレコード会社、オコラ(ocora)。扱う内容が内容だけに国営放送局だけがバックなだけでは運営が難しかったのか途中からはクラシック、特に古楽や宗教音楽、現代音楽なども得意ちしたレーベル、ハルモニア・ムンディの援助も受けて運営されているレーベルです。レーベルの名前はなんとなく日本人には愛着はわくような名前であります。
  さて、今回取り上げる作品は、1973年7月12日、パリにあるラジオ・フランスのスタジオ内で収録されたベトナムの民族音楽集でオコラから発表されたもの。タイトルに記されたように本アルバムはベトナムの伝統的な楽器を用いて演奏された新しい伝統音楽を製作しよう、という趣旨の下に製作されたようです。ベトナム音楽の第一人者、トラン・カン・ハイ(Tran Quang Hai、1944年ベトナム出身)や演奏家としてだけではなく東洋音楽を研究する学者としても有名なトラン・ヴァン・ケー(Tran Van Khe、トラン・カン・ハイとは血縁関係なのか?) を含め、ラジオ・フランスのスタジオに集まった3人は以下の布陣です。

■トラン・ヴァン・ケー (月琴、ダントラン=16弦箏、トロン・ニャックレー=太鼓) 
■トラン・カン・ハイ  (拍子木、匙) 
■トラン・ティ・テュンゴ(木床)


  詳しい解説によれば、ベトナムの伝統音楽は中国の伝統音楽に近いと言われており、その為かベトナムの伝統音楽で使用される楽器には中国の楽器に非常によく似た特色の物が多いそうです。もっとも、そんな薀蓄を書いてみた所で、実際に楽器を見た事もない私には、いや、皆さんにも余り意味がないでしょうが。 ベトナムの民族音楽、という言葉から連想されるような、琴の親戚のような楽器を用いて演奏されるオリエンタルなメロディも随所に見られるものの、本アルバムはその他大勢の汎用な学術レベルの民族音楽アルバムではなく、差し詰め”インプロヴィゼイション民族音楽”といってもよい常識破りのハイ・スピードな超絶演奏テクニックによる、まさにタイトル通りの新しい伝統音楽です。通常は英語のタイトルしか記しませんが内容が内容だけに日本語のタイトルも下に記しておきましょう。

1. チャウ・ヴァンとハウ・ヴァン形式での月琴即興 
2. ニャックレーの太鼓の即興 
3. クァン旋法による幻想的な月琴の独奏 
4. 16弦箏による哀愁旋法 
5. シュアン様式によるのどかな即興16弦箏 
6. サ・マック様式による即興


  どうですか、余計判りませんね(笑)。内容を理解してもらう為には1度聴いてもらうしかありませんが、民族音楽(エスニックな要素を取り入れたロック作品ではなく、純然たる民族音楽)をこれまで聴いた事のない人にとっては非常に辛いでしょうから、誰にでも薦められる作品じゃありません。それとは別に本アルバムの録音は非常に素晴らしくオーディオ機器のテスト用としても最適です。とにかく人間離れした3人のハイ・スピードな演奏を忠実に再現できるかが鍵。空前絶後の本アルバムを聴いた後だと、現代音楽やジャズ、ロック等ジャンルに限らずどんな作品でも「ダル」な音楽に聞こえてしまうのもこのCDの魅力のひとつ。かつてはアナログ・レコードで、一部のオーディオ・マニアから熱狂的な支持を得た超優秀録音盤、長い間CD化されませんでしたが、1998年にハルモニア・ムンディのディストリビューションにより目出度くCD化された際には即効で購入したことは言うまでもありません。

  民族音楽だからと侮るなかれ。あらゆるジャンルを音楽を含めても、これほどの卓越した演奏を聴く事のできるアルバムに一生のうち何度も遭遇する訳じゃありません。大型コンポでボリュームを上げて聴けば、心臓の弱い人だと余りの切れ味鋭い本アルバムのサウンドにショック死するかもね。


投稿日 : 2000/05/05 

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