Izukaitz / Izukaitz (1978) |
1. Zikiro Beltza 2. Emaiozue 3. Zuberoako Ihauteria 4. Hala Baita 5. Lo Hago 6. Xori Bele 7. Xabaldorrena 8. Jarrai 9. Agur |
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1970年代の後半から1980年代初頭のスペインの音楽シーンにおいて2枚のアルバムを発表したスペインのフォーク・グループ、イスカイス(Izukaitz)。同時期のスペインにはイトイス(Itoiz)とかイツィアール(Itziar)とか、いずれも生楽器をフューチャーしたアコースティックな質感のサウンドを得意としていた、なんとなく似たような名前のバンドが存在して少々ややこしいが、このイスカイスもアコースティックな質感のフォーク/トラディショナルな音楽性を発揮して1980年前後のスペインはバスク地方の音楽シーンに華やかな色香を放っていたバンドの一つだったようです。日本でも10年程前にマーキー/ベル・アンティークから国内販売されていた過去があったようだが、フラメンコの国らしからぬ可憐なサウンドで地味ながらも少なからずフォーク/トラディショナル・ファンの心をこれまで虜にしてきた。 スペインを代表するスパニッシュ・ロック・バンドといえばグラナダやトリアナといった即座に名前が挙がる大物バンドを筆頭に、ゴチック、アイスバーグ、エロビ、クラック、ゴマ、コンパニア・エレクトリカ・ダルマ、フシオーンといったバンドをこれまで取り上げてきたが、特定のジャンルの音楽性に偏らないというか、ロックの先進国である米英ほどではないが、知れば知る程、スペインのロック・シーンも剛から柔まで結構幅が広いものだと関心するばかりだ。今回取り上げるイスカイスもフラメンコ・ロックの本場スペインとは一見似つかわしくない柔らかいサウンドを得意として音楽活動を展開していたバンド。勿論、バスクという地域がスペイン国内に存在する地図にない別の国とも言われるだけに、《濃い国》というスペインに対する通俗的で表面的なイメージだけで解釈するのは限界がある事だけは確かだ。
フォークロアな雰囲気たっぷりの音楽性を誇るプログレッシヴ・フォーク/トラッド・バンド、イスカイスのデビューは1978年。セルフ・タイトルによるデビュー作「Izukaitz」の時点ではフルートやヴァイオリン、ギター、キーボード、ベースなどの楽器を担当する演奏家達を中心に構成されていた6人編成のバンドで、この手のバンドの定説というか、外連みのない女性ヴォーカリストもメンバーの一人として抱えていた。この作品を提供したレーベル
XOXOA
はバスクのレーベルで主に地元バスク出身の音楽家達の作品を発売していた会社。アイセア
(Haizea)という、これまたプログレッシヴ風のフォーク/トラッド・バンドの作品やエキゾチックなジャズ/フュージョン・ロック・バンド、エロビの作品を発表したレーベルとしても知られている。 ■ Fran Lausen - Violin, Guitar, Vocal イスカイスが音楽シーンに残した作品は多分「Izukaitz」「Otsoa
Dantzan」の2枚。今回取り上げる作品は1978年のデビュー作「Izukaitz」の方。ちなみに私が持っているCDは
Elkar/Lost Vinyl という会社から発売されたもの。現在では
Guerssen
というレーベルから再発されているようだが音質はどうなのか。私の持っている
Elkar/Lost Vinyl
盤の音質はあまり良くない。音はモコモコこもっているし、スピードが変わってしまうような部分がある事からマスターから起こしたものではなく盤起こしの可能性もある。銀盤に刻まれた肝心の音楽自体に全く問題がないだけに、音質の悪さはなんとかして欲しい。過去、日本国内でもマーキーから正式発売されていたようだが、こちらの音質はどうだったのか。
彼等がお手本としていたのはペンタングルやフェアポート・コンヴェンション、スティーライ・スパンなどの英エレクトリック・トラッドだろうか。古めかしいフルートやヴァイオリン(フィドル)の使い方は時に古楽のようでもあり、時にプログレッシヴ・ロックにおけるシンプルで小品集的な展開でもある。良く言えばバラエティに富んでいるとも言えるが、反面、中途半端で手法が未消化であるとも取れる。結果的にベースはフォーク/トラッドなサウンドでありながらも堅苦しい形式的なスタイルに捕られずに唄われる(奏でられる)事に落ち着いているのがイスカイスの特徴となっている。また、時に悲恋なイメージが浮かび易いような寂れた旋律を少々内包している音楽でもあるので、陰気臭い音楽が好きな日本人にも好まれ易いサウンドでもあるだろう。 |