Island / Pictures (1977)
( Progressive Rock, Symphonic Rock )

1. Introduction 
2. Zero 
3. Pictures 
4. Herold And King(Dloreh) 
5. Here And Now 

6. Empty Bottles (Bonus track)
Island / Pictures (1977)

  かつてノー・ウェーヴ・バンドのDNAやデビュー当初フェイク・ジャズ・バンドと呼ばれていたラウンジ・リザーズに在籍していたギタリストのアート・リンゼイ(Arto Lindsay)と1980年代前半にアンビシャス・ラヴァーズというユニットを結成、1984年に同ユニットのデビュー作となる「Envy」を発表、当時目敏いリスナーから注目を浴びていたスイス人キーボード奏者、ピーター・シェラー(Peter Scherer)。DNAやラウンジ・リザーズには当時注目していたものの、アンビシャス・ラヴァーズ自体に特段深い思い入れのない私には余り馴染みのない固有名詞がピーター・シェラーというミュージシャン。が、彼が過去に在籍していたスイスのプログレシッヴ・ロック・バンド、アイランド(Island)の名前はユーロ・ロックの好きな人ならば外す事の出来ない重要アイテムです。

  エマーソン・レイク&パーマー「Brain Salad Surgery」、マグマ「Attahk」、シヴァー「Walpurgis」といったアルバムと同様にアルバム・ジャケットにスイスの天才画家、H.R.ギーガーの作品を起用したアルバムを1977年に発表したアイランドというバンドは1967年頃から1969年頃まで活動していたシヴァーというバンドの残党が参加したデフ(Deaf)というバンドのドラマー、ギタリスト、フルート奏者3人にトード(1972年から1974年にかけて3枚のアルバムを発表したスイスのハード・ロック・バンド)というバンドを脱退したベーシストやヴォーカリストらが参加した6人編成で1972年頃に結成されたバンドです。
アイランドは数年この編成により活動を展開した後、元ブレインチケットのベース奏者だった Werner Frohlich がトードに再加入するなど若干のメンバーの移動などがあり最終的にはご存知ピーター・シェラーを加えた4人編成に落ち着いた模様ですが、1977年に唯一発表された「Pictures」の時点で、実は既にバンドとしての活動は停止していたそうです。


 前衛シンフォニック・ロックの隠れた迷盤?と言える「Pictures」に正式メンバーとしてクレジットされているのは以下の4人。

 ■Peter Scherer   - keyboards, pedal-bass, crotales, voices 
 ■Benjamin Jager  - lead vocals, percussion 
 ■Rene Fisch      - sax, flute, clarinet, triangle, voices 
 ■Guge Jurg Meier - drums, gongs, percussion

 結成当初から数年間は1972年に解散した元デフのギタリストや元ブレインチケット、元トードのベーシストが参加しておりましたがアルバム製作以前に脱退してしまった為専属のギター奏者及びベース奏者抜きという布陣(ベース・パートはシェラーがペダル・ベースで代用)、それ故必然的にキーボード中心のシンフォニック・ロックという体裁に仕上がっております。収録されている殆どの曲をピーター・シェラーが書き上げている為、はっきり言ってしまえばピーター・シェラーの存在なくして世に登場しなかったアルバムと言ってもよいかもしれません。プロデュースにはイタリアのアクア・フラジーレやPFMを手懸けた事で知られるクラウディオ・ファビが、録音はファビの都合に合わせたのかイタリアのリコルディ・スタジオにて。ちなみにイタリア、そしてリコルディと言えばプログレ・ファンには”ツァラトゥストラ組曲”のムゼオ・ローゼンバッハの名前が思い浮かぶ事でしょう。


 さて本作はシェラーのキーボード演奏を中心としたプログレシッヴ・ロック(シンフォニック・ロック)の体裁を取りつつも、現代音楽やフリー・ジャズ、更にクラシックの器楽曲や室内楽曲的なアプローチも見られる点が、メロディアス一辺倒の月並みなシンフォニック・ロック・アルバムとは一味も二味も違う所。変拍子が多用された、どことなくダークで呪術的かつ神秘的な雰囲気はアール・ゾイドやユニヴェル・ゼロといった暗黒系チェンバー・ロックをも彷彿とさせますが、反面既存のプログレシッヴ・ロックの形態から抜け出せない一面もあるのがマイナス点か?(いや、それともそれがプラス点?)プログレ・ファン、ユーロ・ロック・ファンならば1度は聴きたい力作。

  アイランド解散後、ピーター・シェラーはクラシック音楽やエレクトロニクスを本格的に勉強、その後皆様ご承知の様にアンビシャス・ラヴァーズへとピーター・シェラーの物語は続きます。    


投稿日 : 2002/12/06 

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