Frumpy / All Will Be Changed (1970)
( German Organ Rock , Blues Rock , British Rock Overtones )

1. Life Without Pain 
2. Rosalie, Pt. 1 
3. Otium 
4. Rosalie, Pt. 2 
5. Indian Rope Man 
6. Morning 
7. Floating, Pt. 1 
8. Baroque 
9. Floating, Pt.2 

10. Roadriding (Bonus Track)
11. Time Makes (Bonus Track)
Frumpy / All Will Be Changed (1970)

  一瞬男では?と錯覚してしまいそうな骨太のソウルフルな女性ヴォーカリスト、インガ・ランプ(Inga Rumpf)を中心に1970年代前半に活動した、ドイツのオルガン・ロック・バンド、フランピー(Frumpy)。七色に変色したカメレオンが描かれたジャケットのデビュー作や円形変型ジャケ(当時)の2作目がジャーマン・ハード・ロック・ファンには特に有名です。ドイツ出身のロック・バンドといえばグル・グル、カン、タンジェリン・ドリーム、アモン・デュールII、ポポル・ヴー、クラフトワーク、ファウスト、クラスター、エンブリオら、月並みなロック・ミュージックの概念を遥かに凌駕した、オリジナルティ溢れるサウンドを確立したバンドが多い反面、ブリティッシュ・ハード・ロックやプログレッシヴ・ロックのサウンドの模倣に終始したバンドが多い点も見られるのが特徴。
  このフランピーというバンドもブリティッシュ・ロック、取分け、1970年代前半のヴァーディゴ・レーベルの専売特許とも言えるオルガン・ロックやキーボード・サウンドをフューチャーしたディープ・パープル系のハード・ロック・サウンドの影響の強いバンド。また、女性シンガー、インガ・ランプのヴォ−カル・スタイルはジャニス・ジョプリンからの影響も見て取れるでしょう。演奏スタイルもサウンドも他の国のロック・サウンドからの影響を見て取れるだけに、批評家的に言えば、B級ロック・バンドという扱いになるのでしょうが、ブリティッシュ・ロック、特にハモンド・オルガンをフューチャーしたロック・アルバムに目がない人にとっては注目すべきバンドかもしれません。

  フランピーの前身バンドに当たるバンドがアイルランド人ギタリストのジョン・オブライエン・ドッカー(John O'Brien-Docker)を中心に1964年頃に結成されたフォーク・バンド、シティ・プリーチャーズ(City Preachers)。この記事を書くまで全く知らなかったバンドですが、 このバンドは1969年に一時崩壊するまでデッカ・レコーズを主戦場に数枚のアルバムを発表しておるとか。ちなみにスラップ・ハッピー〜ヘンリー・カウ〜アート・ベアーズに参加した独ハンブルグ出身の歌姫、ダグマー・クラウゼがシティ・プリーチャーズの晩年に当たる1968年に同バンドに参加したのだとか。ちなみにダグマーが参加したシティ・プリーチャーズの作品は1969年?にデッカから発表された「Der Kurbis」というタイトルの作品。それとジョン・オブライエン・ドッカーとフランピーを結成してしまったメンバーを除く面々でシティ・プリーチャーズは1971年に独メトロノームから「Back to the City」というカムバック・アルバムを発表しておりますが、ご承知のように、ダグマーはこの後当時の恋人アンソニー・ムーアとスラップ・ハッピーを結成する事になります。
  フランピーはシティ・プリーチャーズが崩壊後、同バンドに在籍していたインガ・ランプらを中心に結成された、ギタリスト抜きの4人編成バンドで1970年の春から本格的なツアー活動を開始しております。当時のメンバーはランプの他、ベース担当のカール=ハインツ・シュット(Karl-Heinz Schott)、ドラマーのカールステン・ボーン(Carsten Bohn)、フランス人キーボード奏者のジャン=ジャック・クラヴェッツ(Jean-Jaques Kravetz)。1971年発表の第二作「Frumpy 2」からはギタリストのライナー・バウマン(Rainer Baumann)が参加して5人編成へ。この後キーボード奏者のクラヴェッツが一時バンドを離れてソロ・アルバム「Kravetz」を製作しておりますが、翌1972年に発表された、スタジオ作品としては3作目となる「By The Way」で復帰しております。同年2枚組のライブ・アルバム「Live」が発表されておりますが、フランピーとしての活動はここで終わり。


  1970年の夏に独フィリップスより発表された、カメレオンのアート・ワークでよく知られたフランピーのデビュー・アルバム「All Will Be Changed」(CDはボーナス・トラック2曲追加収録)。純然たるドイツ出身のバンドでありながら、ジャーマン(クラウト)・ロック色は皆無といっていい程、ブリティッシュ・ロックからの影響を感じさせる作品。その為、プログレッシヴな独自性を重んじる生真面目なユーロ・ロック・ファンにはお奨め出来ませんが、ジャジーなブルース・ロック・アルバムがお好きなブリティッシュ・ロック・ファンにはお奨め出来るでしょう。追加収録されたボーナス・トラックにはギターがフューチャーされていますので、恐らく2作目以降フランピーに参加するライナー・バウマンではないでしょうか(記載はないけど)。荒削りなアンサンブルが特色の4人編成の1作目より、ずっとすっきり統制のとれたアンサンブル。
  本アルバムの特色は女性ヴォーカリスト、インガ・ランプのソウルフルで男勝りの骨太な歌声、そしてオルガン・ロック・ファンにはたまらないであろう、ジャン=ジャック・クラヴェッツが奏でるハモンド・オルガンの音色。専属ギタリスト抜きという、プログレッシヴ・ロック・バンドにはよくありがちな編成(ベース+ドラムス+キーボード)のフランピーのサウンドの中核を担うのは当然の事ながらキーボード。そして全体的に重く暗く沈みがちな楽曲を盛り上げるのは、1970年代前半のジャーマン・ロック・シーンを代表する女性ヴォーカリスト。ファンキーなナンバー「Floating, Pt. 1」や、ELPタイプのプログレッシヴ・キーボード・ロックからの影響を強く感じさせる「Baroque」など、聴き応えも充分。60年代サウンドを引き摺るロック・ミュージックが70年代サウンドへと変貌する過渡期におけるアルバムでもあります。過去に何度も書いてきましたが、1970年代初頭のロック・ミュージック・シーンにおける、なんともいえぬ完成途上な雑多な雰囲気が私は大好き。ブリティッシュ・ロック・ファンなら1度は一聴を。

  フランピーの活動停止後、ランプ、クラヴェッツ、シュットの3人は新たなギタリスト、新たなドラマーを加えた5人編成でアトランティス(Atlantis)というバンドを結成して音楽活動を継続しております。1973年にヴァーディゴ・レーベルから「Atlantis」でアルバム・デビュー、このバンドもフランピー同様ドイツ出身のバンドらしからぬブリティッシュ・ロック似のサウンドを特色としていたため、当時イギリス国内で高い支持を獲得したのだとか。実質2年程で解散してしまったフランピーの倍、アトランティスは4年程の活動期間の間に「Atlantis」「It's Getting Better」「Ooh, Baby」「Get On Board」と4枚のスタジオ作品とライブ・アルバムを発表しております。
  アトランティス解散後、インガ・ランプはソロ活動を展開、アトランティス解散前に発表されたソロ第一弾「Second Hand Madchen」(1975年)を起点として(1970年にシティ・プリーチャーズ時代の同僚ダグマー・クラウゼと共演の形で「I.D.Company」というアルバムを発表済み)、「My Life Is A Boogie」(1978年)、「I Know Who I Am」(1979年)、「Reality」(1981年)、「Lieben.Leiden.Leben.」(1984年)、「Two Is One」(1986年)とソロ活動を継続する傍ら、1990年にフランピーを再結成させ、「Now」(1990年)、「News」(1991年)の2枚のスタジオ作品とライヴ・アルバム「Live Ninety Five」(1995年)を発表。  


投稿日 : 2003/04/24 

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