Cactus / Cactus (1970)
(Hard Rock, Boogie Rock)

1. Parchman Farm 
2. My Lady from South of Detroit 
3. Bro. Bill 
4. You Can't Judge a Book by the Cover 
5. Let Me Swim 
6. No Need to Worry 
7. Oleo
8. Feel So Good 
Cactus / Cactus (1970)

  サボテン科植物の総称名である「cactus」をバンド名にしてしまった英ハード・ブギ・スタイルのロック・バンド、カクタス。バニラ・ファッジのリズム・セクション、カーマイン・アピス(Carmine Appice)とティム・ボガート(Tim Bogert)が中心となって結成されたバンドで、丁度第一期ジェフ・ベック・グループとベック、ボガート&アピス(BBA)との間を埋めるような存在の彼らは1970年のデビューからバンドの中心的存在である2人がジェフ・ベックと新バンドを結成する1972年まで、活動期間はわずか3年余り(ニュー・カクタス・バンドは除く)。
 1944年NY生まれの米国人ベーシスト、ティム・ボガートと1946年同じくNY生まれのドラマー、カーマイン・アピスの2人の名前が音楽シーンに注目を浴びるのはサイケデリック&ヒッピー・ムーブメント真っ盛りの1967年の事。2人は1960年代ロックを代表する名曲、「キープ・ミー・ハンギング・オン」の大ヒットを放った当時のアメリカのサイケデリック・バンドを代表するヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)のベーシスト&ドラマーとして在籍し事実上活動停止状態となる1969年まで在籍しておりました。

 一方、ジェフ・ベック。エリック・クラプトン脱退後のヤードバーズにギタリストとして加入、その後ジミー・ペイジが加入してジェフ・ベックはヤードバーズを脱退、最近ガンから復帰したロッド・スチュワートや現ローリング・ストーンズのロン・ウッド、ミック・ウォーラー、故ニッキー・ホプキンスと俗に言う「第一期ジェフ・ベック・グループ」を結成し、「Truth」(1968年)、「Cosa Nostra Beck Ola」(1969年)という2枚のアルバムを残すものの1969年3月に第一期ジェフ・ベック・グループは解散(この後ロン・ウッド&ロッド・スチュワートはピーター・フランプトンとハンブル・パイを結成するため脱退したスティーヴ・マリオットの後釜としてスモール・フェイセズに加入、バンドはフェイセズと改名して新たな伝説を築き挙げた事はご承知の通り)。
 解散後、かねてから協力なリズム・セクションを探していたジェフ・ベックはこのヴァニラ・ファジに在籍していた2人の強力な米国人ミュージシャンに白羽の矢を立て、レッド・ツェッペリンを結成して名を挙げつつあった、ライバル、ジミー・ペイジに対抗しようと元ヤードバーズのエリック・クラプトンが結成した3人編成のクリームのジェフ・ベック版とも言える新バンドを結成しようと企て、ヴァニラ・ファッジの2人もこれを了承、ヴァニラ・ファッジ解散後に「飛行船号」や「黒い安息日」「深紫」に負けず劣らずの歴史に残る強烈バンドが誕生する筈でした。が、、、、、


 ■ Rusty Day      - Vocals, Harp 
 ■ Jim McCarty    - Guitar 
 ■ Tim Bogert     - Bass 
 ■ Carmine Appice - Drums 

 1969年11月、ジェフ・ベックは交通事故に遭遇、やむなく一時リタイアを強いられる事になります。ジェフ・ベックの突然の無期リタイア情報により新バンド結成の企画は中に浮き、やむなく2人はラスティ・デイ(Rusty Day)、ジム・マッカーシー(Jim McCarthy)というボーカリスト&ギタリストに声を掛けてカクタスを結成する事になります。そして1970年に発表されたアルバムがこれ。ジェフ・ベックが羨望の眼差を贈っていた2人の実力は冒頭の Mose Allison 作曲の1曲目を聴くだけで分かります(本当に冒頭の1曲目だけで分かります)。ブギ・スタイルのハードなロック・ナンバーでアルバムは幕を開け、生ギターをフューチャーしたアメリカのバンドらしいカントリー・タッチの楽曲に引き続いて(箸休のような感じで個人的にはGOOD)再びファンキーなリズムの曲へと繋がります。
 本アルバムを耳にしたリスナーの魂を揺さぶるのに充分な粒揃いの楽曲集でありレッド・ツェッペリンやクリーム、あるいはステッペン・ウルフを彷彿とする演奏はこれらのバンドの作品が好きな方にはキット気に入ってもらえるでしょう。でも、カクタスの音楽の下地にあるのはやはりブルース。ブルース・ロックからブギ・ロックやハード・ロック、そしてヘヴィ・メタルへ繋がる系譜の中で是非とも忘れて欲しくはないバンドがカクタス。全米アルバム・チャート最高54位。

 本作後にカクタスは「One Way...or Another」、「Restrictions」と2枚のアルバムをリリース、ティム・ボガートとカーマイン・アピスが連れてきた2人が脱退し代わりに3人のメナンバーを加えて5人編成となったカクタスは「'Ot & Sweaty」を1972年にリリースするももはやカクタス継続に意欲のない2人はジェッフ・ベックと3人の名前からバンド名をベック、ボガート&アピスと名付けられた新バンドを結成、これにより使命を終えたカクタスの歴史は終わりを遂げてしまいます。この後カクタス残党がニュー・カクタス・バンドと名乗り「Son of Cactus」という名のアルバムをリリースしますが、まあこれはどうでもいいでしょう。


投稿日 : 2001/9/26 

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