投稿日:2002/10/02  投稿者:七福神

Shocking Blue / At Home (1969)
( Dutch Rock, Psychedelic Pop/Rock, Bubblegum Pop )

1. Boll Weevil 
2. I'll Write Your Name Thru the Fire 
3. Acha Raga 
4. Love Machine 
5. I'm a Woman 
6. Venus 
7. California Here I Come 
8. Poor Boy 
9. Long and Lonesome Road 
10. Love Buzz 
11. Butterfly and I 

12. Harley Davidson 
13. Fireball of Love 
14. Hot Sand 
15. Wild Wind 
Shocking Blue / At Home (1969)

  力感溢れる女性ヴォーカリスト、マリスカ・ヴェレス(Mariska Veres)をメインとしたオランダ出身のポップ・ロックバンド、ショッキング・ブルー(Shocking Blue)。かつてバナナラマや演歌歌手になる前の長山洋子、あるいは荻野目洋子といった歌手が唄っていたチョー有名曲「ヴィーナス」(1969年12月全米1位)を始めとして「悲しき鉄道員」「ショッキング・ユー」「ロング・ロンサム・ロード」などのヒット曲を放った事のあるショッキング・ブルーは日本では上記のヒット曲(特に有名なのがCMやTVドラマの挿入曲として使われまくりの「ヴィーナス」でしょうか)らのおかげで、長い間動もすれば一発屋(いや数発屋か?)といった扱いをこれまで受けてきたバンドです。
  私を含め一般のミーハーな音楽ファンというのは単純でインパクトのあるヒット・シングルを短期間に集中して放ったバンドに対し、その後ほとぼりが急速に冷めた後そのバンドがいくら優れたシングルやアルバムを発表したとしても、いつまでもそのバンドに対して所謂《1発屋》というイメージを持ち続けてしまう事になります。それでもオリジナル・アルバムがちゃんとした形でリリースされているのなら、まだ幸いでしょうがシングル中心のベスト・アルバム位しか入手する事ができない状況が長らく続いたりするれば、《1発屋》というイメージが世代を超えても尚生き続けてしまう事になります。これは音楽家にとっては真に辛い状況であります。

 リアルタイムで聴いていなかったせいか、個人的にもこのショッキング・ブルーに対してシングル・ヒット数曲のみの《1発屋》だと長らく思っておりました所、ある日ひょんな事から彼等が1960年代後半に発表したオリジナル・アルバムを手に入れる事となりましたが、結果アルバムを聴いて彼等に対して長らく抱いていた、シングル・ヒット数曲のみの《1発屋》という偏見を頭の中から払拭する事に成功したのでありました。実は日本国内(シングル部門)においてはポール・マッカートニー、アバ、ローリング・ストーンズ、ワム!といった実力者を上回るセールスを過去に残しているのでありました。この事から察するに1970年代初頭の日本国内での彼等の人気は相当凄かったのではないか、と思われます(ちなみに日本国内でのシングル部門売上歴代1位はカーペンターズ)。

 結成は1967年。1944年生まれのギタリストで、当時オランダ国内ではザ・モーションズというバンドのメンバーとしてもよく知られていたというロビー・ファン・レーヴェン(Robby VanLeeuwen)を中心にフレッド・デ・ワイルド(ヴォーカル)、クラース・ファン・デア・ヴァル(ベース)、コーネリア・ファン・デア・ベーク(ドラムス)という布陣によりオランダで結成された4人編成のバンドであり、グループの大半のオリジナル楽曲の作詞/作曲を手掛けるロビー・ファン・レーヴェンが同グループのサウンドの要。しかし、リスナーの感心を引きつけるのは、やはりパンチの効いたソウルフルな歌声を真骨頂とした黒い髪が魅力的なエキゾティックな女性ヴォーカリスト、マリスカ・ヴェレス(1949年生まれ)。彼女もロビー・ファン・レーヴェン同様、ぽっと出の新人アーティストという訳ではなく既に1964年頃からプロとして活動してきた人物であり、ショキング・ブルーには脱退したフレッドの代わりに1968年から途中参加。
 1969年、Pink Elephant というレーベルと契約して発表した「Venus」というシングルが世界的なヒットを記録する事で一躍世界のトップ・スターとなったショッキング・ブルーは同年、満を持してデビュー作「At Home」を発表します。翌1970年にショッキング・ブルーは通算2作目となるアルバム「Scorpio's Dance」を、そして1971年には日本では”悲しき鉄道員”の邦題でよく知られている「Never Marry a Railroadman」を含むアルバム「Third Album」を発表する事になる。この後も1974年に解散するまで「Ink Pot」「Live in Japan」「Eve And The Apple」「Dream On Dreamer」「Good Times」とショッキング・ブルーは精力的にアルバムを発表し続けました。


 ■ Mariska Veres          - Lead Vocal
 ■ Robby Van Leeuwen      - Guitar, Sitar
 ■ Klaasje Van Der Wal    - Bass
 ■ Cornelius Van Der Beek - Drums

 今回紹介するアルバム「At Home」はショッキング・ブルーの名前を世界中に知らしめたヒット曲「Venus」を含むデビュー作品。オリジナル収録曲11曲の内10曲がロビー・ファン・レーヴェンの手によるもの。当時の音楽メディアがショッキング・ブルーを『オランダのジェファーソン・エアプレイン』と評価した事から判るように、当時ジェファーソン・エアプレインのグレース・スリックとマリスカ・ヴェレスのヴォーカル・スタイルがよく比較検証されたそうです。なるほど、確かに甲乙つけがたいパワフルな唄い方ではありますが、サイケデリック末期に登場したショッキング・ブルーのサウンドの要であったロビー・ファン・レーヴェンはビートルズやホリーズ、ローリング・ストーンズといった流行のバンドのサウンドをよく研究し、それらのバンドのエキスを自らのバンドの土台に注入して更に万人に判り易くショッキング・ブルー流に解釈したのであります。
 だから全米シングル・チャート1位に輝いた「Venus」を筆頭に収録された曲の出来が粒揃いも当たり前というべきか。それに彼等のサウンドにはサンフランシスコ出身のバンドに見られる『クスリ』の匂いが余り感じられず、よくも悪くも彼等のイメージを当時から今日まで永遠に続くショッキング・ブルーの健康的なイメージを形成する事になるのです。これは翌1970年にも発表された2作目「Scorpio's Dance」にあてはまる事。ダークなイメージを余り感じないのはレコード会社にとっては結構な事かもしれませんが、アーティストにとっては正直致命的といえるかもしれませんね。実際の彼等の当時の私生活についてはよく判りませんけれどもね。

 1960年代サウンドをベースとした、判り易く、かつ親しみ易いショッキング・ブルーのサウンドは今日の感覚で聴いても充分に楽しめると思います。「Venus」1曲目当てで購入したとしても、ある程度の洋楽ファンならばアルバム全体に大きな失望を抱く事はないでしょう。第一、曲がいい。粒が揃っているしね。ちなみにボーナス・トラック4曲は1969年に発表されたシングルのB面に収録されていた4曲。


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